「てかさー、この原付、誰の?」
エンジン音に声をかき消されそうになりながら尋ねると
健吾の得意げな返事が返ってきた。
「2年の佐山さんに借りた」
「佐山さんって……あの?」
「ああ」
佐山さんとは、俺らの地元では知らない奴がいないくらい有名な
まあ一言で言っちゃえば、すんげ~恐ろしい先輩だった。
健吾は生意気なわりに年上から目をつけられることもなく
その佐山さんにまで気に入られていたのだ。
「佐山さんって、まじでカッコイイんだぜ。
強いし頼りになるし。
あとで原付返しに行くから、そんときアキも紹介してやるよ」
「……いや、別にいいよ」
俺の声が聞こえなかったのか、健吾は何も答えず、意気揚々とハンドルを切った。



