「橘くん!これ、受け取ってください」


「……は?」



放課後の教室でボンヤリしていた俺は

見知らぬ女子から突然渡されたプレゼントに、「ありがとう」すら言えなかった。



「何、これ?」


てかあんた誰?

という言葉を飲み込んで、俺はおとなしくプレゼントを受け取る。



「バレンタインのチョコ、手作りしたんです!
甘いもの嫌いじゃなかったら、食べてください!
……じゃあ!!」



早口で言いきると、その女子は顔を真っ赤にして去って行った。



2月14日。

世間はバレンタイン・デー。


でも当時、まだ中1だった俺には、まったく興味をそそられないイベントで。


……それに、


「もらっても食えねぇっての」


俺はひとり言をつぶやき、乱暴な仕草でチョコを鞄に放りこんだ。