かすかに湿気をふくんだ空気と、シートから伝わる振動が心地いい。
こうして健吾とふたりで風を切るのは、何度目だろう。
2ケツなんか数えきれないほどしてきたけれど
そのたびに目の前の背中が、広くなっていく気がしていた。
しばらく走って信号待ちで止まったとき
「月島先輩!」
突然、健吾を呼ぶ声がした。
「おおー。久しぶりだな」
健吾は道路わきの駐車場にたまっていた集団を見て、気さくに話しかける。
「お久しぶりです!」
ぞろぞろと走り寄ってきたのは、見るからに中学生という男5人。
茶髪がまだ似合わない童顔に
発達しきっていない体つき。
だらしなく着崩したブレザーは、俺たちの出身中学の制服だ。