「おっ、アキ。用意できたか?」
健吾はコーヒーをテーブルに置き、立ちあがる。
「アキの学ラン姿、久しぶりに見ると違和感あるな~」
「言われなくてもわかってるっつーの」
そっけなく答えた俺に、健吾が後ろからじゃれつくように、軽く蹴りを入れてきた。
「“先輩”に向かってその言葉づかいは何だ、てめぇ」
「年齢は一緒だろーが」
こんな俺らのやり取りを見て、微笑ましそうに目を細めるオカン。
でもその瞳の中に、かすかな心配の色が混じっていることを、俺は知ってる。
「んじゃ、行ってくるわ」
オカンのその瞳が息苦しくて
俺は目も合わさずに言った。
「行ってらっしゃい、アキ。
気をつけてね……」
「んー」