「おおぉ~~!」
クラスメイトたちの尊敬のまなざしが、健吾に注がれる。
雑誌ドロボー。実にしょうもないイタズラだけど、小学3年生から見れば偉業だ。
「すっげぇ~。さすが月ちゃん!」
「あの先生怖いのに、健吾くんって勇気ある~!」
当時、健吾のことを「健ちゃん」と呼ぶのは俺だけだった。
健吾くん、健吾っち、月ちゃん……
健吾のあだ名は数多くあったけれど、「健ちゃん」は俺だけ。
幼い俺にとって、それは誇らしくもあり、どこか気恥ずかしくもあった。
「でさ、お前ら、これ見てみろよ」
健吾は着ていたパーカーの下から雑誌を出して
机の上で、あるページを開いた。



