「橘、今日は学校来れたんだな!体調はどうだ?」
「………」
俺は心の中で舌打ちしながら、黙ってうなずいた。
……言ってんじゃねぇよ。
せっかく病気のこと隠して、まわりに弱みを見せないよう、気ぃ張って生活してんのに。
そんな気分だった。
先生がいなくなると、机の下から健吾が
「ぷはぁ~っ!」
と大げさに息を吐いて出てきた。
「健吾くん、何したのー?」
クラスメイトたちが、わっと健吾を囲む。
幸い、さっきの先生の言葉は、誰も聞いていなかったようだ。
健吾は、俺の机の上に座り、
「職員室にあった本、奪ってきたんだ」
と得意気に言った。



