こうして、佐伯歩の暇潰しは、ゾッとするほど長い人生のささやかな冒険となり、 鳴海悠の演劇鑑賞は、大成功でその幕を下ろしたのである。 視線だけで通じ合い、手を結んだ二人は、 素知らぬ振りをして、何事もなかったかのようにまた離れていく。 帰っていくのだ。 それぞれの世界へ。 それぞれの歩く道へと――