「意外だわ。アナタがそうゆう人間らしい話を、持ち出してくるなんて」
「バカなこと言うなよ。感情だって大抵は数式で説明がつく。
“感情”という漠然と大きな塊をひとつひとつ溶かしていけば、説明のつく理論が、積み重ねられているということが見えてくる」
鳴海悠は思った。
この男は完璧だ。
「やっぱりね。感情まで理解しちゃうなんて、さすが天才は違うわねぇ」
「茶化すなよ」
「ごめんごめん。もうクセになっちゃってるみたい」
「……別にどうでもいいけど」
女は進み続けたいと思った。
この男と共に行き着く先を、知りたいと思った。
その先を……
もっと、もっと――
鳴海悠の心臓は、加速度を増して走り続けていた。
「で?」
「あ?」
「その計画、やるの?」
「……やりたいのか?」
「こんな一見完璧な計画、空想的仮想の世界で終わらせたらもったいなくない?」
この男をなんとか本気にさせたくて、鳴海悠は、その言葉に意図的な揺さぶりをかけた。
「……一見完璧な計画?」

