「てめぇ誰だ!!」

突然の罵声に驚き、巧の体が無意識にビクついた。

振り向くと40代後半くらいの男が巧に棒を向けて立っている。

「米軍のスパイか」

巧はすぐさま違うと答えようとしたが、一瞬でそれが無意味だということに気づき、思い留まった。

相手はランニングシャツに半ズボン姿に対し、巧はGパンにTシャツ姿。

どう考えたってこの時代の服装ではない。

巧はゴクリと生唾を飲み込んだ。

ここで攻撃されたら確実に負ける。

巧は喧嘩があまり強くない方だし、相手は武器になる物を所持している。

下手に動いてしまったら絶対襲われるだろう……。

どうすればいい?と自分に問いかけてみるが、何の策も思い浮かばない。

ただ時間が過ぎていく。

「げほっ……げほっ!!」

少女の咳で、巧は我に返った。

ゆっくりと顔を動かし少女の姿を伺うと、かなり苦しそうに咳込んでいる。

「おい、大丈夫か?」

自分の身を危険に冒してしまうことになったが、巧は少女に向かって話しかけた。

「だいじょ……っげほっげほっ……」

尚も咳き込む少女を見て、巧はいても立ってもいられずに少女の上に覆い被さっている瓦礫に手をかけた。

その時……!!