以前、聡の好物のイカ料理を結衣も作ったことがある。


でも、料理が苦手な結衣は失敗してしまった。


「おいしいよ」


半べその結衣を慰めるように言って、聡はおいしそうにその煮物を食べた。


「イカは下ごしらえが大変だから、仕方ないよ」


聡の何気ない言葉に傷つく自分がいる。


その一言で、彼女が料理上手だとわかってしまう。


料理の下ごしらえをする敦子と、その様子を見ている聡の風景がありありと浮かんでくる。


このままじゃ嫌。


このままじゃ嫌だ。


どうすれば、どうすれば聡はわたしだけのものになるだろう?