お姫様と靴磨きの男



「……。」

父上は黙っていた。


私はそれを
“話を続けなさい。”
と受け取り話を進めた。

「その男は靴磨き
をしていました。
片方の靴で5ラクス
の稼ぎです。

食事も満足にとれず
苦しい生活のように
見えましたが、
その男は常に
にこやかでした。」


私は皆に質問を投げかけた。


「理由が分かりますか?」


…やはり、答えられる
ものは誰もいない。

皆、悶々と考え
込んでいた。


ただ母上だけは
私を真っ直ぐ
見つめていた。

母上だけは答えが
分かっているようだと
私は少し安心した。


「あの男の元気の源は
人々の笑顔と言うのです。」


父上の目が
見開かれたが、
母上は優しく
私に微笑みかけていた。