「その若者は金もなく、
身分も低く、学校にも
行けないような生活を
している男でした。」
「そうか。
では後にお前を
助けてもらった
お礼をせねばな。」
…父上の思考回路は
私に似ているのか?
「お礼はキッパリ
断られました。」
皆、これには驚いていた。
「…どういうことだね?」
「私はなんでも与えようと
言いましたがあの男は
こう言いました。
“私は当たり前の
ことをしたまでです”と。」
「うむ。」
皆の表情は難しいもの
へと変わっていた。
信じがたいのも
無理はないだろうが。
「私はその男を
不思議な奴と思い、
しばし行動を
共にしました。」



