「返してって言ってるでしょぉ!!」


「って!」



バキィと鈍い音とともに座り込む和人。



がら空きの横っ腹を思いっきり蹴ったら咳き込みながら携帯を手放した。



慌てて携帯を手に持ってトイレに逃げ込む私。



「消さなきゃ……早く全てを消去しなきゃ」



サイトを退会して和人に私の書いた小説を読まれることはなかったけど……




『なんで消しちゃうのよ!本当に楽しみにしてたのに!』


「……真央。今それどころじゃないから電話切るよ」



退会直後に真央からかかってきた電話を切った。だって今はまだトイレの中。




「サクラ!怒ってないから開けてって!」


「やだ!絶対やり返すもん!」



あまりに必死で加減なしで和人を蹴ったから絶対に痛かったはず。



イジワル和人が仕返ししないわけないんだから。