ルシェは気が動転しているだけで、この男がセイルな訳がない。

だってセイルはこんな銀色の瞳をしていない。目つきもそこまで怖くはない。

全くの別人だ。


「ルシェさん、此処に兄さんはいないよ?」

「何言っているの? ヒジリじゃない。だってほら……」


ルシェが指を差すのは、ヒジリが首から下げている僅かに見える鎖を通した指輪。

あんな物を彼はしていただろうか?

セリルは最初に出会った時の事を思い浮かべる。

最初に出会った時、彼はあんな物をしていなかった。

よく見れば、その指輪は血で赤く滲んでるではないか。


「あたしの指輪。見つけてくれたんだね」


その声色はとても感激したもの。更に涙が溢れて来そうな表情。