見えない罪と、月

セイルの方が力が勝っていたからなのか、男は抵抗をしなかった。

取り押さえる瞬間を見た周囲の住人からは、拍手が送られた。

その拍手の音を聞きながら、セイルは男を警察へと送り届ける。


「この人、下着を盗んでいました」

「離せっつってんだろうが!」

「白昼堂々、よくそんな事が出来たな。ほら、こっちへ来い」


悪い意味での感心と呆れを見せる警官と、下着泥棒を見送ろうとしてセイルはある事に気付く。


「お巡りさん」

「何だい? 英雄さん」

「英雄だなんてとんでもない……じゃなくて、この下着はどうしますか?」

「ああ、返してくれて構わないよ。持ち主の家は知っているんだろ?」