そのテーブルは1つ運ぶのでも大人2人がかりでなければ大変な物。

それを片手に1つずつ軽々と持っている。男2人は青ざめる。


「このテーブルてめえらの頭の上に放り込むぞ?」


先程までの穏やかな口調はそこにはなく、表情も笑っているものの周りを凍りつかせるような笑顔。

そして何も言わずに男達は逃げて行った。瞬間、近くにいた客からは拍手が飛び交う。


「本当、助かるよセリル君。今回は器物損壊もなかったしね」


マスターのその言葉に、セリルは苦笑を浮かべる。

セリルが喧嘩を止める時は、その怪力が故に大抵物が壊れているからだ。

初めて止めた時はテーブルを真っ二つにへし折り、2度目の時は壁に穴を開けた。

そのおかげでセリルの初任給はこの弁償代でその多くを差し引かれている。


「俺だって少しは大人になっていますから」


テーブルを元の位置に戻しながらそう一言。