この想いを君に…

「光さん、パパから多少は聞いていたけど、まさかここまで凄いとは思わなかった」

キョロキョロしながらあたしが言うと光さんは苦笑いしながらベッドに腰をかけた。

「俺はこの環境が嫌やから。
早くから家を出られるように必死やった。
結果、高校2年でワークスと契約出来たし卒業してすぐに世界にも行けた」

「どうして、家を出たかったの?」

その問いに光さんは視線を落とした。

「…奏もまだ小さかったし、俺の居場所がこの家にはなかったから」

居場所…

「こんなに、いつ帰ってきてもいいようにされているのに?」

あたしの疑問に光さんは

「俺が言う居場所は、精神的に休まる所や。
少なくともこの家にはないから。
本家やから親戚付き合いとか色々あって、小さい頃から大人の顔色ばかり伺ってた」

ため息をついた光さんは苦しそうな表情で

「だから俺は早くから自分で稼いで生きて行きたかった。
この世界で食べて行くのは本当に厳しい。
でも、俺が自分らしく生きていけるのはロードレースの世界しかないって思ってたから」

何不自由ない生活。

あたしから見れば羨ましい限り。

いつもパパやママはやり繰りに大変だから。

だから少しでも頑張っていい成績を出して賞金を貰ったらそのまま渡して。

でも、生活は苦しくても、あたしの家は精神的に苦痛とかはない。

逆に色々楽しい。

光さんは生活は苦しくないけど、常に精神的に追い込まれる。



…どちらがいいなんて言えない。