「…理解ある彼女というても、人妻やろ!」

今までずっと黙っていた光さんが少しキレ気味に祥太郎の後ろ姿に叫んだ。

「お前の中にはずっと梓ちゃんがおるんやろ?
別れた時もホンマに嫌いで別れたんじゃないし」

光さんの言葉でゆっくり、振り返った祥太郎。

じっ、と光さんを見つめている。

「今、梓ちゃんがお前の恋敵と離婚する話が進んでるなら、お前、チャンスやんか!
はよ追いかけんかい!」

祥太郎は目を細めて光さんを睨みつけた。

「…うるさい奴だな」

祥太郎はため息まじりに頭を振ると駐車場の方に向かって歩き始めた。

「祥太郎!」

あたしは叫んだけど、祥太郎は聞いているのか聞いていないのか、わからなかった。