「伸也?」


過去二回の29日の朝には伸也からの電話なんかなかったのに……、と不思議に思いながら電話に出た。


「もしもし?」


「オー健!おはようざいやぁぁす」


何かあったのか、やたらとテンションの高い伸也の声が電話から聞こえてきた。


しかしどこか怯えを隠しているような感じがした。


「おう。おはよう」


「僕って昨日、お前ん家行って飲んでたんやでなぁ?何かよー?お前ん家に行った記憶あんのに帰ってきた記憶無いし、変な記憶とかもあってさー。僕、飲み過ぎやでなぁー?ハハハ」


「えっ、お前、今何て言うた?」


「だから、飲み過ぎやでなぁー?」


「ちゃう、ちゃう、その前や。変な記憶あるっ言ったでな……まさか……覚えてるんか?」


なんと、時間がリセットされたのに伸也には記憶が残っていたのだ。


説得されて本気で信じた人には記憶があるのだろうか?いずれにしても進展があったことが嬉しい。


「やっぱ……あれは夢やなくて、現実か……」