本来なら、通し稽古の予定なんだけど。
優斗がいるから、止めながらの稽古に変更。
達哉君がサポートしてくれたお陰で、スムーズに進むことが出来た。
「達哉君、ありがとね。」
「ん?・・・あぁ、別にたいしたことしてないよ。」
照れたのか、ほんのり頬が赤く染まっている。
褒められることに、慣れていないみたいで。
なんだか可愛らしい。
あ、今日一緒に帰れるかな。
「あー・・・い・・・。」
愛に声を掛けようと振り向くと、そこには話したことのない女の子がいて。
愛は、凄く楽しそうに笑っていた。
「あ、もう帰る?
また明日ね、未来。」
「うん。ばいばーい。」
未来、と呼ばれたその女の子は元気な笑顔で答える。
立ち止まってる私に気付き、こっちに来てくれる愛を見て。
何故だか、ぎこちない笑顔を向ける事しか出来なかった。
ーーーーーーーーー・・・・・
帰り道、
どうしてもあの子のことを聞きたくなってしまう。
なんでだろう。
友達ができることは嬉しいはず、なのに。
おかしい。
ちょっと、寂しくなってしまっている自分がいる。
「愛、
さっきの女の子って・・・?」
「・・・・・・・あ、未来?
町人役の子よ。
未来がどうかしたの?」
「あ、ううん。
ただ何役の子かなーって思っただけ。」
なんて、誤魔化して。
本音なんて、言えるはずもなくて。
ただ笑って坂道を下った。
生暖かい風が頬を撫でる。
うるさい蝉の声もいつの間にか耳に馴染んでいて。
灰色の雲が太陽を隠しているのとシンクロするように。
私の心の中も徐々に覆われていった。
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