「奈々美。
先生が呼んでる。」
振り返れば、
そこには少し茶色の髪はなくて。
ハスキーがかった声もなくて。
紳士な笑顔があった。
ーーーーーーーーーーーーーーー・・・
あのグループから抜け出した時。
すでに人だかりはなくなっていた。
「私何で呼ばれたの?」
「え?
・・・あぁ、呼ばれてないよ。
抜け出したそうだったから。」
あ。
顔に出てた?
そっか。
背が高いから、私が見えたんだね。
「ありがとう。」
「どういたしまして。」
・・・・・・・・・・・・で。
「いつまで腕握ってるの?」
もう離していいでしょ?
「ずっと。」
「・・・へ?」
そう呟けば、いきなり振り返る。
「あの、さ。」
「あ!シンデレラ!!」
達弥君の声を、誰かがかき消す。
見れば、廊下の向こう側に一人の男の子。
・・・あ。
さっきのグループの。
最初に、話しかけてくれた人。
声おっきいなぁー。
そのおかげで、気まずい空気もかき消してはくれたけど。
達弥君はすっと私から離れ、階段を降りて行ってしまった。
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