どうしよう。
こんなにドキドキしてたら、さすがの優斗も気づいちゃうよね?
だけど。
もう、ラストシーンなんですけど。
ガラスの靴がピッタリと入る。
それを見た紳士は『貴女が王子の探していた人なのですね』と、嬉しそうに笑う。
王子にボロボロな姿のまま会いに行き、本当の事を告げた。
私は綺麗なお姫様なんかではない。
ボロボロな灰かぶり姫なのだと。
『見た目など何も気にすることはありません。
私は貴女を好きになったのです。』
そう優しく言ってくれる優斗に、涙が出る。
泣く予定ではないのに、涙が止まらない。
『私も。
貴方が好きです。
大好き・・・』
大好きです。なんて、台本にはない台詞を言い終わらないうちに、優斗に引き寄せられた。
洋服の上からでもわかる体温。
鼻をかすめる優斗の匂い。
ドキドキすると同時に、胸が締め付けられる。
優斗?
抱き締めるなんて、台本には書いてないよ?
今までやったことなかったじゃん。
・・・・・・バカ。
メイク、付いちゃうでしょ。
夢じゃなければいいのに。
貴方が本当に好きになってくれれば・・・。
わかってる。
あともう少しでこの魔法は解けることも。
貴方は、別の人に微笑むことも。
だから、終わってほしくない。
そう、願ってしまうの。
舞台は暗転し、ラストに向けて舞台転換。
魔法が解けるまで、あと15分。
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