『はあ…』



口から出るのはため息ばかり。



「大丈夫?」



急に話かけられたかと思うと、目の前には……どっかで見たことのある男の子。



「おーい?」

『あ、ごめん…ボーッとしてて』



…ってか、あなたは誰ですか?



「もう授業終わったよ」



周りを見てみると、みんな帰宅準備や部活準備をしていた。



『ほんとだ…』



…でも、あなたは誰ですか?



「今日、大事な日なんでしょ?早く帰りなよ」

『う、うん。なんで知ってるの?』



…だから、あなたは誰ですか?



「彰に相談されてたから」

『え?彰と知り合い?』



…ほんと、あなたは誰ですか?



「中学ん時、サッカーの試合で何回か一緒になって。仲良くなったんだ」

『へぇ…』



彰はこの学校にサッカー推薦で入学出来るほどの実力派なんだ。


…ところで、あなたは誰ですか?



「じゃあ…頑張って」

『うん、ありがと!』



ニコッと爽やかな笑みを残して、彼は去って言った。



…結局、あなたは誰だったんですか?


それだけが疑問に残り、彼の後ろ姿を見送る。


あ、優花が彼に抱きついた。


…ってことは。



『ごめん、神田くん。やっぱ苦手なもんは苦手だよ』



いまだに覚えきれていなかった優花の彼氏、神田駿くん。


背中押してくれたのにごめん。


それから、ありがとう。


彼に心の中でお詫びしてから、あたしは教室を出た。