桜の花びらたち

どこまでも続きそうな追いかけっこ。
それは、1人の女性の登場により不意に終止符を打たれた。
風はたなびく胸ほどの長さの髪を抑えながら、彼女はプログラムを捕まえる。
「ありがとうございます!!」
ようやく追いついた皐月は女性からプログラムを受け取った。
プログラムは皐月の手に握られながらも、まだ暴れていた。
「本当に助かりました。」
お礼を言いながら彼女の顔を見た皐月は、次の瞬間はっと息をのんだ。
目の前の女性は歳の頃は20代半ばといったところだろう。
ピシッとしたスーツに身を包んだ彼女は少し首をかしげ優しい笑みを浮かべている。
その笑顔や仕草、雰囲気は。3年前に亡くした妻によく似ているのだ。
「今日は風が強いから、気を付けてくださいね」
まだ幼さが残る様な少し高く可愛らしい声、それでいて芯が通るような声。
「あ・・・ありがとうございます!」
皐月は少し上探った声で勢いよく一礼すると、すばやく向きを変え、向こうで待つ拓海の元へと走り出した。