島をえぐる入り江から、浅く緩やかに広がるクリアブルー。

きらめく砂の先には、何層にも亘る珊瑚礁。

このリーフには、知らない場所なんてないわ。

だって、毎日のように遊んでるもの。

端々にまで、ふたりの今までが刻まれてるの。

凪いている日に、気持ちいいねって見上げた空も。

心地よい風も。

彼がお昼寝する岩場も、あたしが定位置にしてる岩の窪みも。

みんなみんな大切で。

彼と過ごす時間は、かけがえのない宝物なの。

何度も何度も、一緒に海の中を泳いで回った。

彼はモリの名手なんだって。

だけど、むやみに魚を襲わないの。

手のひらに触れるか触れないかの位置で、楽しそうに魚達が戯れるのを見守ってる。

彼はあたしに、海の美しさを教えてくれた。

海底に降る太陽のきらめき、優しい水音。

海の中がこんなに楽しいなんて、彼に出会って初めて知ったの。

仲間と過ごすって、こんな感じかな?

今までは、食べても、泳いでも、強がっていても。

決して満ちることのなかった胸の中が、こんなにも豊かなのは。

きっと、彼の笑顔がそばにあるから。

あの日から。

ううん、あの時落ちた恋よりずっと深い思いが、胸の中いっぱいに溢れてる。

人間とかそんなのもう関係ない。

彼のいない生活なんて考えられないほどに、あたしの中の思いは育ってた。

あたしは、彼を・・・・愛してる。