この一瞬が"奇跡"と呼べないのなら。

何をそれに例えればいいんだろう。

彼に出会ったのは、運命なんだとココロが感じた。

金色の前髪がふわりと揺れて、現れたブルーの優しい瞳。

澄んだ水のように明るくて、まるで太陽にキラキラする波間のよう。

なんでこんなにドキドキするの?

そんなあたしの鼓動を知ってか、彼はふわっと笑った。

見つめられて、体に力が入らない。

どうしよう、・・・どうしよう!

あたしは夢中で身体をねじって、その場から逃げ出した。

あんなに怖い思いをしたのに。

人間は・・敵・・なのに。

だけど。

ココロの中の残像を砕くように泳いでも、あの金色の光が離れてくれない。

泳ぐ早さなら誰にも負けないのに。

なんでこんなに蹴る水が重いの・・・・。

あたしは珊瑚礁の手前で立ち止まった。

くるくるとその場で旋回して。

振り返って、またくるくる回る。

ああ。

あの波は、どんな嵐よりタチが悪いのよ?

そんなこと、分かってる。

決して叶わぬ思いでも?

ずっと前にババ様から聞いた、泡になってしまったお姫様の物語。

ふと頭の中を掠めていった。

あたしもいつか・・・

恋する想いに負けてしまったら、泡になって消えちゃうのかな。