花飾りが、バラバラと朽ちてゆく船の欠片ともに海面をはじいた。

彼女は、危機一髪のところで彼に腕を掴まれてた。

だけど、彼を支えているのは不自然に折れまがった柵。

ウオォォォォという船の悲鳴の合間から、キシッキシッという嫌な音が聞こえてくる。

どうしたらいいのか分からなかった。

二人から目が離せない。

大きな船体がグラリと揺れて、後ろ半分が海の中へ沈んでゆく。

反対側にいた彼らは、すごい勢いで空へと持ち上げられた。

いつの間にか降り出していた雨と、激しく舞う水しぶきで、彼の指が震えてる。

このままじゃ、ふたりとも落ちちゃう、誰か・・・ッ!

ふいに、彼女はキリクの名前を呼んで微笑んだ。

彼はとっさに、駄目だと叫んだ。

「リジーーーーーッ!!!」

彼女は。

まるで鳥のように舞うと、大きな渦に飲まれていった。

そして、彼もまた。

彼女を追って飛び込んだ。

その直後。

船はけたたましい音をたてて真っ二つに割れると、あっという間に海の底へと沈んでいった。

その後、どうなったのか分からない。

あたしは大きな渦の中を泳いでた。

体のあちこちに、強い衝撃を受けたけど、そんなことはどうでもよかった。

最悪の視界の中、懸命に彼らを探した。

そして。

気がついたら雨は上がり、東の空が白んでいた。

さっきまでの惨劇なんて、何もなかったかのように、海はもとの静寂に戻っていた。