その壁には見覚えがあった。

この島の沖でぶつかりそうになった人間の乗り物だ。

裕福な人間の乗る客船、そう教えてもらったっけ。

この大きな壁の上に、数えきれないほどの人間がいるんだとか。

それはいいけどさ。

万が一にでも、あたしのこの美しい尾ひれが傷ついたら。

絶対に許さないんだからね!!

ムカムカと停泊した白い壁相手に息巻いてると、島の方から物凄い音が聞こえてきた。

ヒュッ・・パン パパパン パパパ・・・!!!

うわぁっ、びっくりした!何っ?!

一度海に沈み、恐る恐る見上げると、空に小さな雲がいくつも上がってた。

島から上って弾ける不思議な雲。

魅入っていると、人間の大きな笑い声がワァッと沸いた。

「いよいよだな、ぼっちゃんの婚約パーティ。」

その声に聞き覚えがあった。

聞き耳を立てながら、あたしは警戒して身を潜めた。

島から荷物を乗せた小型のボートが近づいてきて、白い壁の脇に止まる。

あれは、あたしを殺そうとした人間たちだ。

「ああ、すっかり、大人になって。」

重そうな何かを二人掛かりで持ち上げると、ロープを結えた台の上に乗せた。

合図とともに荷物はスルスルと上っていく。

「これでご主人様も安泰だな。長い間病に伏せっておられたが。」

「ああ。なんてったって、大富豪のシャルロット家がつくんだから。うちは安泰さ。」