「…暑ぅ…」 わかっているのに、口から出ちゃう言葉。 私は鞄の中から、100均で買ったキティちゃんの団扇を取り出し、パタパタと扇ぎながら、隣の車両に目を向けた。 …あ、今日もいる! ただでさえ暑い7月の電車の中で、私の身体は更に熱くなる。 毎朝7時32分の電車。 最後尾の女性専用車両に乗る私。 その隣の、一般車両に乗る、名前も知らないスーツの男の人。 ――私の、好きな人。 .