集まった人々の中では、飛びぬけて若く思えるその男は、
熱に浮かされたような彼らの中で、
一人だけ醒めた顔つきをしているように見える。
なんだろう。
ひょっとして、頭が悪く、私の説明が理解できなかったのだろうか。
それとも、
もしや囚人の仲間で、脱走を手引きしようという犯罪者ではあるまいか。
私は、わずかに不快な気分になって、
その男に声をかけた。
「そこのあなた。
何も発言されていないようですが、
ご質問などはございませんか?
どうでしょう。わが国の刑務所は」
すると男は、にっこりと微笑んで、応えた。


