そんなある日、うちのクラスに転校生がやってきた。

「倉島夕です。よろしくお願いします」

その子は女子で、明るく優しそうな子だった。
私とは正反対にきっと幸せな所で育ったのだろう。

私とは正反対で、きっと友達も沢山増えるだろう。


「皆さん倉島さんと仲良くしてくださいね。じゃあ倉島さんは高橋さんの隣の席に着いて」

「はい」

倉島さんはゆっくりと千尋へ近づいていく。
そして指定された席に座った。


「倉島夕です。よろしくね」
倉島さんが千尋にニッと笑いかけた。裏表のなさそうな可愛い笑顔で。

千尋も「よろしく」と視線を前に向けたまま無愛想に返事をした。
元々人と話すのを嫌う千尋だから、こんなの日常茶飯事だけど。

でももうちょっと初対面の人を労われよ、千尋。

倉島さん本人はあまり気にしてない様子だが。

「あ、あなたの名前は?」

私の視線に気づいたのか、名前を問い掛ける倉島さん。
社交的だなァと感心しながらも「林葉加奈です。こちらこそよろしく」と返した。

人と関わるのはちょっとだけ抵抗があるけれど千尋程ではない。

話しかけられればそれなりに対応できる。


「ふふ、加奈ちゃん。よろしくね」

倉島さんが笑いながら言った。
その時微かに胸騒ぎを感じた。本当に小さなものだったけれど。