本当に 空耳なんじゃないか と思うような 小さな音だったけど それは女の声で 押し殺すような泣き声だった。 きっと吐き気のせいで 耳の感覚だけが やけに鋭くなっていたんだろうね。 その声は ビルとビルの 細いすき間から 聞こえているようだった。 おれはそのすき間を のぞいてみたけど真っ暗で だけどそこから 声がするのは確実だったから 体を横にして そのすき間に 入っていったんだ。