そうして反省したはいいものの、いざ顔を合わせるとそうもうまくはいかない。

俺のせいだと分かったはいいが、長澤に本当のところを聞く手段も勇気もなかった。

結局、事務的な会話と無愛想な態度で接してしまう。


あの別れ以来、人のことなんてどうでもいいと思っていた俺が、長澤のことだけは気にかかる。

“冷たい人だと思っただろうか”

“嫌な上司だと思っただろうか”

気になりだすと止まらなかった。





そんなとき、小銭がなくて困っている長澤が目に止まった。

仕事の疲れも出始めていたんだろう、朝から眠そうだったからコーヒーを飲もうとしているのがすぐに分かった。

俺は勇気を出して声をかける。


「長澤、何も買わないのか?」


困っていたのに気づいたくせに、素直に「買ってやるよ」と言えない自分が情けない。

こんな一杯のコーヒーくらいで謝ったことにはならないが、せめて謝るきっかけがほしかった。


「登坂さん・・・・す、すみません」


でも、長澤は俺の顔を見るなり縮こまる。当然の反応だった。