あっ、まだ半分もお礼・・・・。

と思う間に、モッサ君はあたしに背を向けて歩き出した。

その後ろ姿はすごく格好よくて、引き止めるのも忘れるほど。


「ありがとう!」


人ごみに紛れていく背中に大きく声をかければ、返事の代わりにヒラヒラと手を振るモッサ君。

そして数秒後には、その背中は完全に紛れて見えなくなった。


「ありがとう・・・・。いろいろと。バイバイ、モッサ君」


あたしは、もらったお守りを胸に抱いて、見えるはずもないモッサ君に向けて笑顔を作った。

ありがとう。

それから・・・・ごめん。





1人家路につきながら、ぼんやりと今日のことを振り返る。


昼休みに一服中の登坂さんに会いに行って、モッサ君と今夜会うことを伝えて。

そのとき、登坂さんも元カノさんと・・・・麻紀さんと今夜会うことを教えてもらった。

そして、あたしはモッサ君と友だちに戻ることができて、いい別れ方ができた。


今頃、登坂さんはちゃんと会えているかな・・・・。

夜空を見上げて、彼を想った。