「特別な理由はないんだよ。会ったときから純子と呼んできたからいきなりジュンと呼ぶのが照れくさくって、ずっとそのままきちゃった」
私はまた嘘をついた。前々から聞かれたときに用意していた答えだった。
「そうなんだ。メールくらいジュンと書いてほしいな」
「わかった。今日のおやすみメールはジュンに送るよ」
手を振りながら純子の背中が徐々に小さくなるのを見ていると、私はやるせない気持ちになる。
純子が他の子とちょっと違うなと感じたのは中学校のときからで、何度か男子にコクられても即答で断っていた。
私がカッコイイなと思う男子でも簡単に振ってしまう。



