純子の性格からすると、正直に話せば面白がって地下鉄駅に引きずって荒療治される可能性がないとはいえない。
けれど、悪夢のことを話さないと解決の道は険しい。
こういうときはメールが便利。
口で話すより文字の方が勇気を出すことができる。
お風呂から上がると「先に食べてるわよ」と、不機嫌気味のお母さんに追いつくように食事を済ませた。
木曜日の当番であるお母さんがせっかく作ってくれた料理の味は覚えていない。
間を置かずにメールをしていれば、地下鉄で見た悪夢のことを告白できたかもしれない。
しかし、いざ純子にメールをしようとすると迷いが出てしまった。
面倒くさい奴と思われないだろうか?
“わかった。明日からバス通学しよう!”というこっちが望んでいるメールが、返信されてくるだろうか?



