柳沼家からの帰り道、今後のことを考えた。


 亜里沙ちゃんのお世話をする日と食事当番が重なる月、水、金曜日はスーパーのお惣菜か弁当で我慢してもらおう。


 手料理の回数が減ることで怒られはしないと思うけど、お小遣い稼ぎをしていることがバレたらお母さんのプライドを傷つけてしまう。


 岸城3丁目駅のプラットホームに降り立ったとき、「私がもっと楽な生活をさせてあげていれば……」と泣いてしまうお母さんの最悪な反応をイメージしていたせいか鏡の前を素通りできたことに気づく。


 地下鉄がやって来る気配がなく、私はベンチに腰を下ろした。

 ステンレス製でお尻が冷たくてシャキッとするかなと思ったら眠気が襲ってきた。

 生まれて初めて面接っぽいものを経験し、開放されて緊張の糸が切れたせいかもしれない。


 アナウンスが流れれば起きれるだろうと、私は瞼を閉じた。