病院にいけば集中力を切らすことが許されない仕事が待っている。 そうだ。娘と同じ年の悠斗君に絵本を読んであげる約束をしてたんだ。 結局、仕事のことを考えてしまった自分に見切りをつけ、私はゆっくり瞼を開けた。 そろそろ電車が来る頃。 私は腕時計で時間を確認するため、何気なく左手首を持ち上げた。 あれっ?! 握っていなければいけない娘の手がなかった。 寄りかかっていた支柱の周りにも娘はいない。