「私の親は心配いりません」 私はお母さんの顔を思い浮かべながら答えた。 「そうだといいのだけれど」 まるで私の表情を盗み取るみたいに、羊さんは片目だけを見開いて観察する。 時間にして10秒もなかったかもしれない。 静謐(せいひつ)な時間に耐え切れず、私は制服のスカートをギュッと握った。 「明日からお願いできるかしら?」 半分諦めかけていたところへ思いがけない言葉が飛んできた。 「はい!」 もちろん私は即答した。