地下鉄駅へと通じる階段を下り、自動改札口にICタグ付きの定期券をかざす。


 【汐見台行き】のプラートホームに下り立つとき、左に視線を動かして鏡に入っている自分を見詰めた。


「気になる?」

 純子が微笑んで訊く。


「純子があんなメール送ってくるからだよ」

 私が怖がると純子は微笑んだ。


 純子は悪戯好き。

 でも、嫌われることはない。

 相手の気持ちを読んで、ここまでならいいだろうという見極めがうまい。

 私に怖い話をしても怒らないことは、とっくに調べがついているのだ。