「どうしたの?」

 本の表紙をただじっと見詰めていると純子が不思議そうな顔をして尋ねてくる。


 亜里沙ちゃんが『鏡の国のアリス』の本のことを話したとき、首を絞められていたから聞いている余裕がなかったんだ。


「ううん、なんでもない」と、私が首を振ると、刑事さんが婦人警官を引き連れて戻ってきた。

 女の人がいたほうが話しやすいと思ったのかもしれない。


 私は急いで本を学習机に置いた。


 真っ赤なリボンをした少女が写った一枚の写真が、スルリと滑るように本から抜け落ちたことを私は気づかなかった。