警察が来ても私と純子は首を縦に振るか横に振るかの二択しかできなかった。


 話したところでどこまで信用してもらえるか不安だった。


 紺色のくたびれたスーツを着た中年の刑事さんは困った顔をして頭を掻く回数も増えていく。


 私たちは2階の廊下で「何が起きたんだ?」という類の質問を何度もされた。


 鏡の部屋を厳つい顔をした警察の人たちが忙しそうに出入りして、カメラのフラッシュの光りがもれてくる。


 凄惨な出来事を思い出したくなかったし、純子が“鏡を押しただけ”の行為を告白するまで、私は口を閉ざしていようと思った。


 庇うとかえって余計な嘘まで出てきそう。


 純子の目はまだうつろで、夢の世界から抜け出せていないように見える。