亜里沙ちゃんと羊さんに純子の家庭の事情を説明しても、理解しようとする心なんて存在するはずがない。 「純子を返して!」 私は腹の底から訴えた。 「あなたはもう亜里沙のお姉ちゃんじゃないんだからこの家から出ていってよ」 亜里沙ちゃんが口を尖らせる。 「純子を離さないなら警察に通報する」 私はケータイを出して、震える指を制御しながらボタンを押した。 「いいよ、警察を呼んでも。でも、ジュンお姉ちゃんが死ぬほうが早いかも」と言ったあと、亜里沙ちゃんが羊さんに目配せした。