「お母さんは?」 親ならば純子のケガを見過ごすわけがなく、それなりに対処してくれているはずだった。 「若い男の人とどこかに出かけて、月に1度くらいしか帰ってこない」 「そんな……」 勇人君の言葉を聞いて私は愕然とした。 純子は重大な悩みを一人で抱え、だれにも相談できないでいたのだ。 「いま話したことお姉ちゃんに言わないでね」 純子に口止めされているらしく、勇人君がすがるような目をして言う。 「わかった」 私は約束すると学校に行く勇人君と別れ、純子の家の前に立った。