幸福な時間って長く続かないんだと感じてしまう日になってしまった。


 仕事が遅番の母さんは朝食を用意してくれて、おかげでゆっくりできた私は元気良く「行って来ます」を言えた。


 亜里沙ちゃんにひどいことをされたのに、それほど落ち込まずにいる自分をたくましく思えた。


 あの悪夢に比べたら……。


 そう考えることで、亜里沙ちゃんとの苦い経験を脳の隅へ追いやることに成功していた。


 ただ、問題は残されていた。


 亜里沙ちゃんのお世話を辞退すると羊さんに伝えていないことと、お金を返還することの二つ。