SEASON

今でもバスケしたいよ。

心で叫ぶものの何も言わないあたしに何も気づかないで先生はあたしの返事を書き留める。

授業は熱心にしてて、生徒に対しても一生懸命っていい先生だな。

家じゃきっといいお母さんなんだろな。

「それじゃ、考えて来てくれたかしら?朝言ってたこと。まずは熱中しているものあるかしら」

「特にないです」

「あら、冷めてるのね」

「冷めてます?」

「まぁ。他の生徒たちは少し間を置いて答えてくれていたわ」

先生の言っていることは大方当たってると思う。

あんな環境下で冷めないってのも無理な話だけど。

「大切なものは?」

ない――――と言いかけて頭に思い浮かんだのは陽生たちの顔だった。

これがあたしの大切なもの?

自分に問いかけても返ってくる様子のない答え。

でも、普通以上であるのは確か。

今はあたしの中でその形を作ってる最中。

だからはっきりしたことは言えないけど小宮先生を見ていたら無性に伝えたくなった。

お母さん、の姿を重ねて見てるからかな。