ＳＥＡＳＯＮ

「…………」

タケ兄の冗談にあたしと丹羽さんは冷めきった目線を送ると罰が悪そうに１つ咳払いをすると本題に入った。

「あー、捺未さ、ギターやってたよな？今も弾けるか？」

タケ兄が音楽系に興味を持つなんて珍しいなと思いつつ肯定の返事を返す。

「ならさ、これ弾いてみてよ」

丹羽さんがズボンのポケットから折り畳まれた白い紙をあたしの前に出す。

なんの疑問も思わず素直にそれを受け取っりあたしは紙を開けようとする。

「じゃ、後日迎えに来るから」

丹羽さんに一方的に話を終わらされてタケ兄と丹羽さんは車へ戻っていこうとする。
あたしはそれを慌てて呼び止める。

「待って！タケ兄と丹羽さんお茶でも飲んで行きませんか？」

これがあたしに出来る最大限のことだった。

お茶に誘うのが精一杯でましてもっと一緒に居てほしいなんてのは言えない。

あたしはそこまで素直になれない。

「わりぃ、これからバイトなんだわ」

車のキーに手を掛けながらタケ兄はすまなさそうに答える。