SEASON

「マスター、今日はそのくらいでいいでしょう?店で傷害事件起きたらめんどうでしょ」

さらっと聞き捨てならないことを言う風幸に「しょうがないわねぇー、次は無いわよ?」と言いマスターは元の位置に戻った。

ふう、と安堵の息をもらす千明をちょっと可哀想に思いながらも声はかけなかった。

だってさ、あたしまで巻き添え食らうの嫌だし。

マスターなかなか怖いみたいだし。

…出来るだけマスターの言うことは聞いとこう。

「んじゃ俺ら準備して来るから」

手を上げてこの場を離れようとする陽生を慌ててマスターが止める。

「その事なんだけどぉ…」

「?何、マスター?」

言いずらそうにマスターがもじもじしながら上目使いで陽生の様子をうかがう。

って!気持ち悪いんですけどマスター!

とは口には出せずに千明を見ると苦笑いしていた。

千明もさすがにこれはちょっと…て思うんだね。

「実はね、先客がいてね、かっちゃんから聞いた時間とかぶっちゃってね、ハルちゃんたちは9時からになっちゃったの」

テへ、とでも言いそうな勢いでマスターは舌を出す。

相変わらず上目使いで。