ＳＥＡＳＯＮ

「痛っ」と千明は頭を押さえ、ど突いた本人――――山田篤を見上げる。

「あーら、あたしのこと名前で呼ばないって約束したわよねぇ？あれはどういう意味だったのかしら」

訂正します。

山田篤、じゃなくてマスターはドスの聞いた低い声で拳をポキポキ、とならしながら千明に詰め寄る。

「マ、マスター？最初やさかい言っといた方がええやろ思うてな、わいがちょちょいと補足しただけやさかいそない本気にならんといてや」

マスターと一定の距離を保ちながら少しずつ後退する千明の顔は少し引きつっている。

それでもマスターは笑顔を崩さず一歩、また一歩千明に近づく。

「あ、そや、捺未の歓迎パーティーやらしまへん？実はまだやってへんのや。マスターの好きなようにやっていいさかい、な？」

なだめようと頑張っている千明の努力も虚しくマスターはどんどん迫る。

このままだと千明が危ないかなぁー、なんて初めて見たあたしが思うと風幸が間に入った。