SEASON

演奏することが純粋に楽しいと思えた瞬間だった。

終わるのが惜しい。

まだ弾きたい。

まだまだ弾き足りない。

どんなに願っても物事にはいつか終わりがくるもので、最後の1小節が目の前に迫ってきた。

まだ引き続けたいのに、惜しみながら最後の1小節まで弾きききった。

弾き終わった後、あたしの心に嵐が大きな傷跡を残していった。

さっきまでの興奮、胸の高鳴りの余韻に浸っていると金髪に近い茶髪の人がベースを下ろした。

「凄いやん凄いやん!久しぶりやでわいが弾いてるときに鳥肌がたつなんてめったにないわ!陽生、よーこんな人材見つけよったな」

「なかなかだろ?まぁ俺も今日初めて聞かしてもらったんだけど。彼女で問題ないよな?」

「もちろんやで!」

「俺も彼女で賛成」

「決まりだな!」

…何が決まったのでしょうか。

あたしにはさっぱりわからないんですけど。

誰でもいいから説明してほしーんですけど。

そんなあたしを無視して3人はあたしに振り返った。

「改めて、俺は丹羽陽生。ボーカル担当で一応リーダー…かな?」